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インドの世界遺産No.12:ウーティから世界遺産のニルギリ山岳鉄道に乗る(改訂版)
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バンガロール出張の週末、世界遺産に登録されているというニルギリ登山鉄道に乗るため、ウーティまで走ることにした。タイ人とインド人の同僚と一緒に行くことになり、車は1台で旅費を浮かせることができた。宿は前日にウィロー・ヒル・ホテルに電話で予約を入れた。ウーティはバンガロールからマイソール経由で約350km、5時間ほどと聞いていたが、実際にはマイソールまでの渋滞と、山道のすれ違いでスピードが出せないため、7時間はゆうにかかってしまった。
ウーティは標高2300mの高地にあり、もともとイギリス植民地時代に避暑地として開けた町である。車で山道を登ると耳が少し痛くなり、高地に向かっていることを教えてくれる。町の中心はチャーリング・クロス、ロンドンの地名がつけられている。また登山鉄道の横にはウーティ湖という人造湖が1824年に造られており、避暑地の雰囲気を盛り上げている。9月の下旬のウーティはインドとは思えない涼しさ、いや早朝は息が少し白くなるほどの寒さであった。
インドの4つの「登山鉄道」がユネスコ世界遺産に登録されている。いずれも約120年前、イギリス統治時代に建設された狭軌の鉄道である。4つの鉄道とは、ダージリン・ヒマラヤン鉄道、ムンバイの西のマティラン丘陵鉄道、ニューデリーの北西のカルカ・シムラ鉄道と並んでここニルギリ登山鉄道である。高地の気候を利用して茶や果実を栽培、その運搬と、イギリス人避暑地への輸送のため建設された。
ニルギリ登山鉄道のゲージは1mの狭軌を採用しており、当然車両も狭い。車両には通路がなく、すべてのコンパートメントに扉がついており、シャーロック・ホームズの映画に出てくるヴィクトリア時代のイギリスの車両を思い出させる。ウーティ駅を9:15に出発して、終着駅のクーヌール駅に10:20の定刻に到着した。走れば追いつけるほどの速度であった。チケットは1等車で100ルピー(約200円)、信じられない安さである。列車は5両編成で、1両が1等車、1両は2等車の指定でほぼ満席、その他は自由席で座れない人がいるほど込んでいた。
1等車の中では年配のイギリス人の団体客と、明らかに裕福なインド人の家族と同乗した。賑やかなイギリス人団体と物静かなインド人家族とともに約1時間、起伏にとんだ車窓を眺めながら、しばしインドにいることを忘れて、スイスの登山鉄道に乗っているような気分に浸ることができた。
終着のクーヌール駅では蒸気機関車が牽引する列車を見ることができた。実際には石炭ではなく石油は使っているが、これ以上のノスタルジーを感ずる光景も少ないことだろう。おそらくは年配のイギリス人たちもこのノスタルジーに引き付けられて、遠路はるばるインドの山奥にやってきている訳である。
ウーティからマイソールへ帰る道路はムドゥマライ動物保護区の中を走っている。野生のトラ、チーター、象に注意する看板が至るところに立てられており、これらの動物を見かけた場合は車から降りることが禁じられている。同乗のインド人とタイ人から「日本には野生のトラや象はいないのか?」と真顔で尋ねられ、しばし答えに窮してしまった。我々は運良く象と鹿の群れを間近に見ることができた。
慌しい1泊2日の旅であったが、美しい自然と、ノスタルジーを堪能し、同時にタイ人、インド人との相互理解と、国情の違いを発見することができた。
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