Images of ネパールの郡
学校に行く準備をするアルティ、6歳。彼女の母バビタ・クマリ・ヤダヴは10代で結婚し、教育を受ける機会がなかった。娘には同じ道をたどってほしくないと思っている。ダヌシャ郡ポトール村にてPhoto: Abby Seiff
●カカルビッタ−カトマンドゥ間 ハイウェイバスにて
2000年の7月。
インド紅茶で有名なダージリンへ自称インド人(彼はカリムラと名乗った。実はネパール人だった)の口車に乗せられて遊びに行った事がある。
そいつとはカルカッタのバザール内にあるちいさなバスチケット屋で偶然(=ある種、必然的に)出会った。カリムラが家族に買っていくから一緒について来いと絨毯屋で(恒例の)サリーを見せられた後、その場でとった出前のカレーを一緒に右手で食べながら彼はこう言った。
「これから何処へ行くと?」
「あす列車でパトナに行って、それからヴァラナシに行こうと思います」
「パトナなんてあんなトコ、なんにもありゃせんわい!時間があるんだきゃーダージリンへ行ってみぃや」
「・・・あの紅茶で有名な・・・ダージリンですか?」
そんなこんなであたしの脳では紅茶しか予備知識がないダージリンへ急遽向かうことになった。
この時点であたしはダージリンまでの到着時間、距離、方向なんてまるっきり知らなかった。
バスチケットは買ったものの。果て、、、まぁ、行けばなんとかなる。
取り敢えず出発した。
カルカッタからバスで実に14時間。リクライニングは出来ない座席だわ、隣の真っ赤なサリー着ているおばちゃんがどっしり図々しく寄り掛かってくるわ、おならはうるさいわ、休憩所のトイレの扉が無いわで。徐々に山々を抜けていくので寒くなってきた。
___結局、到着はしたものの。
ダージリンはこの時期霧が特に濃く、観光に来た外国人は誰っーも居なかった。
吐く息は白く、町は閑散としていた。
名産という紅茶をしばき、ぷらぷら散歩して、スケッチして、世界遺産というトイ・トレイン(ダージリン鉄道)を見て、この間までニッポンで働いていたと云うネパール人一家のホテルに泊って英語を教えて貰いながら一緒にヒンドゥー教のモスク(民家の一室)へ行った。そこの床が真っ白でフカフカだった事を鮮明に覚えている。
そして出発の日。ダージリンを午前中に出発。だが到着地点のシリグリまで急なヘアピンカーブが続くわ続くわ、どんどん揺れる。乗り合わせた人たちはみんな無愛想な地元の奴らばかり。誰一人として言葉を交わしていない。そんな中2、3時間が過ぎていく。
お互いの膝を合わせて乗るタイプのせまいミニバスに乗ってたもんだからあたしは段々キモチが悪くなった。ハンパなく酔ってしまったのだ。
窓の外に頭出してゲーゲー吐くあたしを向かいに座っていた一人のインド人が介抱してくれた。彼は片言の英語しか話せなかった。その人は最初手ぶらだったのに目の前であふれんばかりのまるでお菓子の国のイラストに出てくるような可愛らしいオレンジ・キャンディーを両手のひらにいっぱい乗せて食べろ食べろと勧めてくれた。どこにあれだけの飴を忍ばせていたんだろうか。シリグリに着いた時もチャイを勧めてくれたり、とても優しい人だった。
途中、道すがら担架を担いだ一団に会った。全員である言葉を合唱しながら。
死んだ人をああやって運んでこれから荼毘に付しに行くところなんだよ、その人はと教えてくれた。これがテレビでみたヒンドゥー教のあれか、と思いながら段々と酔いは醒めていった。
国境行きのバスの座席まで送ってくれ、車掌にあたしを国境付近で降ろしてくれ、と何やら頼んでいるようだった。最後に彼の仕事先の名刺をくれた。
「HOTEL BROADWAY」 彼の名前はそこにはなかった。
お礼にと少しばかりのお金を差し出したら、受け取ってくれなかった。
インドの国境を越えた先はヒマラヤの国、ネパール。国境の町はカカルビッタという、我々と同じ顔を持つチベット人の多い街だった。
そこで日本人の緒方君という、旅の荷物は全部カオサンで調達したと言う同じ年の男の子に出会った。
日本人に出会ったのは久しぶりだった。彼もまた、カルカッタでカリムラに出会いダージリン行きを勧められたひとりだった。(彼とは別のバスだったのでそこで別れ、その後カトマンドゥとヴァラナシで偶然再会した)
国境の町カカルビッタからカトマンドゥまではこれまで以上に18時間を要した。
車酔いなんてもう吹っ切れてしまった。
夜行バスだったので痴漢はいるわ、休憩所すらなく野にて放尿は当たり前、乗客ほぼ全員窓を全開に開け放っているので夜は寒い寒い。冷えすぎて下痢になってしまった。
運転手に止めろー!腹が痛いー!と騒げば人の顔も見ずに止められない、と頑固一点張りのインド人オヤジ。やっとこさ止まってくれた場所はだだっ広い平地。これじゃぁ隠れてする場所がない。
こっちの人たちって目がイイのよね、おまけに目が大きいからこっち見てるのがわかっちゃてるし。遠くからでも日本人のあたしが用を足してるところ、ずーっと見てんのよ。持ってるトイレットペーパーも白いしさ。ペーパー使うのはここらじゃ外国人だけでしょ?
そんな中、何回目かに止まったトイレタイム。近くにあった一軒の民家。
小さな女の子がいた。
民家なら、せめてトイレは無くたってそういう為の場所はあるだろうと思って聞いてみた。
英語なんて通用しないから用を足すマネをした。どこどこ?
キャッキャッ笑いながら彼女は人差し指を下に差す。
あっそー、ここでしろってか。。。
おねえさんするからあっち行っててー、って言ってもまだキャッキャ笑いながらずーとあたしを見てる。
見かねて、おかあさんは娘にこら、見るもんじゃないの!こっち来なさいって助けてくれた。
ふと、上を見上げると。なんと、、、
星の海!見た事も無いような幾つもの星星が煌めいている。
色まで見える!赤かったり、白かったり、黄色や青っぽくも。
すっっごく感動した。庭先の井戸で手を洗いながら女の子に星を指差したら「ウン、ウン!」てポンプをコキコキ汲み上げながら頷いてくれた。
なんとも素敵な夜だった。
一番星のキレイな国は?と聞かれたら、真っ先に言う。
ネパールだと。