Images of パーキンソン症候群
パーキンソン病の症状「無動」に関する研究(2017年11月29日公開)(図2)ドキシサイクリン(Dox)によりドーパミンD1受容体の発現を調節することができます。Doxを投与していない状態(図左)ではD1受容体が作られますが、Doxを投与すると(図右)D1受容体が作られなくなります。(図3)D1受容体の発現をなくすと、マウスの運動量が減りました。 マウスのホームケージでの動きを24時間継続的に、Dox投与前から投与開始後27日目まで測定しました。遺伝子改変マウスにDoxを投与すると(図中の赤色グラフ)、1週間目(1-6日目)からマウスの運動量は減少し始め、投与期間を通して減少が続きました。一方、他のマウス(Doxを投与しない遺伝子改変マウス、Doxを投与した野生型マウス)には、そのような変化は見られませんでした。(図4)大脳皮質からの指令は、ハイパー直接路、直接路、間接路という大脳基底核内の3つの経路を通って伝えられ、運動をコントロールします。大脳皮質を電気的に刺激することによって運動指令をシミュレートすると、大脳基底核の出力部である脚内核には3つの経路を通った信号が伝えられ、興奮-抑制-興奮という3相性の神経活動として記録されます。大脳基底核内のドーパミンは、線条体の神経細胞にある受容体に結合することにより、大脳基底核内の信号の伝達を調節しています。(図5)D1受容体の発現がない状態では大脳基底核出力部(脚内核)の3相性応答のうち抑制が消失しました。脚内核の神経活動を記録し、大脳皮質の電気刺激に対する応答を調べました。Dox投与前は、興奮-抑制-興奮の3相性の活動が見られますが(図左)、Dox投与中、すなわちD1受容体の発現がない状態では、抑制が消失しました(図右)。(図6)ドーパミンD1受容体を介する情報伝達は、直接路を通る信号の伝達と運動の発現に不可欠。正常な状態では、直接路(大脳皮質-線条体-脚内核路)が脚内核の神経活動を抑制することによって運動を引き起こします(図左)。一方、D1受容体がない状態では、直接路を通る信号が伝わりにくくなり、脚内核の神経活動を抑制できなくなるため、運動が起こりにくくなります(図右)。(論文情報)Dopamine D1 receptor-mediated transmission maintains information flow through the cortico-striato-entopeduncular direct pathway to release movements.Satomi Chiken, Asako Sato, Chikara Ohta, Makoto Kurokawa, Satoshi Arai, Jun Maeshima, Tomoko Sunayama-Morita, Toshikuni Sasaoka, and Atsushi NambuCerebral Cortex誌、2015年12月 25巻 12号 4885-97頁