Images of 冠山トンネル
今日は岐阜県揖斐川町と福井県池田町の境にある冠山(かんむりやま。1257m)に登ってきました。実は昨年11月に初めて登りましたが、その日はガスがかかって展望どころか冠山の頂上の形も下からは見えなくてがっかりした記憶があります。さいわい今日は絶好の晴天で登山には最適です。
岐阜県揖斐川町の「ムダなダム」として有名な徳山ダムがある徳山湖に沿って国道417号線を福井県に向かって北上します。車がほとんど通らない国道ですが、ダムの予算で造った国道ですから高規格道路です。トンネルの連続です。徳山湖の北の端あたりで国道は中断して(国道417号線は福井県池田町で突然復活して日本海方面へと向かいます)、突然細い山道になります。そこには「冬季通行止め」のゲートが設けられていました。道路が凍結したり積雪があるからでしょう。でも今日は暖かいので凍結はないと思い、ゲートを動かして進みました。先ほどまでの国道とは大違いで、路肩が崩れたり水が流れていたりと荒れています。進むにつれて冠山の頂上部が見えてきました。初めて見る姿です。やはりスパッと切れ落ちた山頂部には登山意欲をかきたてられます。家を出て4時間かかりました。
県境の冠峠に着くと岐阜ナンバーの車が一台あり、すでに登って行ったようです。わたしもすぐ出発しました。登山道は夜間は凍結していたようで、日差しでぬかるんでいましたが、所々に粉雪や氷、霜柱が見られました。小さなピークがいくつかあり、登ったり下ったりの繰り返しです。ここは県境の尾根歩き道で、右は岐阜県、左は福井県で、分水嶺でもあります。足羽川は福井県を貫き日本海へ流れ、揖斐川は岐阜県を貫き太平洋へと流れます。ウソの♂♀が2羽いました。この鳥は花芽を食べるので害鳥とされていますが、今は木の実などを食べているようです。葉は落ちてしまい殺風景ですが、遠くに白い白山が見えて軽快に足は進みます。途中で下山してくるカップルに出会いました。先ほどの車の持ち主のようです。頂上からの展望はどうでしたかと聞いてみると、かれらは「壁が凍結していて危険でギブアップしました」と言い、悔しそうに下っていきました。
歩き始めて1時間で最後の急斜面の壁下に着きました。ここにはササで覆われて冠平と呼ばれる平地があり、気持ちのよい場所です。もちろん冬季には深い積雪に覆われて、過去には大きな遭難事故も起きています。さて、いよいよ最後の壁をほぼ垂直に登ります。この壁にはいつも水が流れていて滑って危険です。今日はそれが凍結していてつるつるになっています。足をかけましたが滑って登れません。縁のササにつかまったり、少しでも尖った岩を見つけてそこに足を載せて滑り止めにしたりして一歩一歩時間をかけて慎重に登ります。固定ロープがありましたが、それも崖に凍り付いてしまって剥がすのに苦労します。滑り落ちれば止まるところがないので、そのまま転落、即死です。電波は通じないし、他には登山者がいないので事故が起きれば大変なことになります。怖い、怖い、と言いながら30分かけて壁を登り詰め、なんとか頂上に着きました。そこは天国です。太陽の光ははさんさんと降り注ぎ、周囲360度の大展望です。岐阜県側はやはりスパッと切れ落ちていて、これまた転落すればひとたまりもありません。恐る恐る下を覗いては、「怖い、怖い」の連発でした。のんびりとランチを楽しみました。ウソの声がまた聞こえます。いつまでもここにいたいのですが、帰宅には下山と運転で5時間はかかるため切り上げます。
下りはいっそう滑りやすくて危険です。登り時よりも注意をして慎重に慎重に一歩ずつ足を運び、なんとか無事に冠平まで下りました。こんな経験はもうこりごりです。次回はもっと暖かいときに来たいものです。冠平を歩き回ってから下山路を急ぎました。
今日登頂したのはわたしひとりでした。360度の一級の展望を独り占めできました。