Images of 米州機構
米中確執, 高まる南シナ海危機…..第2のキューバ危機か第2のキューバ危機か安倍内閣を待ち受ける南シナ海問題という第2の「キューバ危機」 昨年の春、国立公文書館で米国の大統領だったケネディの展覧会が開催された。言うまでもなく、ケネディは日本でも人気の高い大統領だったし、今の駐日米大使キャロライン・ケネディはその長女に当たる。まさに日米親善のために絶好の企画であることは論を待たない。 しかし、なぜこの時期か、私はそこに安倍総理のある種の決意を強く感じた。というのも本展覧会の開催が発表されたのは、一昨年12月9日だが、その7カ月前の5月には、中国が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で人工島を造成し、その上に滑走路の建設を計画していることが明らかになっている。同年10月には、パラセル(西沙)諸島に滑走路が完成し、11月にはスプラトリー諸島での建設中の滑走路が衛星画像で確認された。 そんな状況で、ケネディと聞けば安全保障通なら反射的に思い浮かぶのはキューバ危機である。1962年、旧ソ連は米国に近接したキューバに核ミサイル基地の建設を開始し、偵察機が撮影した航空写真でそれを察知した米ケネディ政権は、基地の撤去を求めてキューバを海上封鎖した。 当時キューバはソ連の衛星国であり、そこに核ミサイルが設置されれば、米国を含むカリブ海沿岸諸国は核攻撃の射程範囲になる。現在、スプラトリー諸島に戦闘機が配備されれば、南シナ海の制空権は中国のものとなり、沿岸国は従属を強いられる。ならば、これを阻止する手立ては半世紀前と同様、海上封鎖ということになろう。 展覧会では、キューバ危機にまつわる数々の資料が展示されており、そこには当時、訪米していた佐藤栄作自民党幹事長(後に総理)の日記も公開されていた。佐藤氏は安倍総理の大叔父であり、その日記を敢えて公開するのは、国民にキューバ危機を身近に感じて貰いたいとの総理の意向であろう。展覧会が開催される直前の2月には、人工島が異常に拡大しているのが報道された。ヒューズ礁は2004年2月に380m2だったのが2015年1月には7500m2と200倍に拡大していたのだ。展覧会が開催されている最中の4月にはスプラトリー諸島のファイアリークロスで滑走路の建設が始まったことを示す衛星画像が公開され、フィリピンのアキノ大統領が強い懸念を示した。バンドン会議で見せたリーダーシップ 同月、安倍総理はバンドン会議60周年首脳会談で「国際紛争は平和的手段によって解決する」べきと演説し、南シナ海問題でリーダーシップをとる姿勢を明確にした。 そもそもバンドン会議とは、1955年にインドネシアのバンドンで開かれたアジア・アフリカ首脳会議で、そこで植民地解放が宣言された。ところが、この会議には欧米列強やソ連は招かれなかった中で、日本だけが優先的に招かれたのである。 つまり当時のアジア・アフリカ諸国は欧米やソ連を植民地帝国として非難していたが、日本は植民地解放の盟主として評価されていた訳だ。いうまでもなく第2次世界大戦のさなか1943年(昭和18年)東京でアジア初の首脳会議「大東亜会議」が開かれ、そこで植民地の解放が高らかに宣言されたことを、各国の指導者は鮮明に記憶していたのである。 ところが、戦後は戦勝国側の歴史観ばかりが喧伝されたため、いつの間にか解放者であった日本が侵略国にされてしまい、2005年のバンドン会議50周年のアジア・アフリカ首脳会議では、当時の小泉総理は、「日本の侵略」を謝罪するという愚挙を犯し、バンドン会議や大東亜会議を記憶していた東南アジアの人々を失望させたのであった。 この謝罪を機に東南アジアの主導権は日本から中国に移り、中国は南シナ海侵略を本格化させることになったのである。 60周年に際して、安倍総理は、「日本の侵略」とか「謝罪」などの表現は一切用いず、「国際紛争は平和的手段によって解決する」というバンドン10原則の一節を引用する形で、中国の南シナ海侵略を批判した。 これに励まされた形で同月末、マレーシアで開かれたアセアン首脳会議では、中国の南シナ海埋立てを非難する議長声明が出されたのである。米中確執 高まる南シナ海危機 この翌月すなわち昨年5月には、米国防総省は中国の南シナ海スプラトリー諸島の人工島の面積が4か月間で4倍に膨らんでいると発表した。同時期に米軍はオバマ大統領に同島周辺海域に米軍艦艇を進入させ、工事を阻止しなければ滑走路が完成してしまうと警告したが、許可されたのは偵察機による周辺飛行だけだった。 もし、このとき米軍艦艇が進入していればスプラトリー諸島に滑走路は完成しなかったであろうが、オバマの不決断の結果、9月に同諸島ファイアリークロス礁に戦闘機離発着可能な3000m級の滑走路の完成が確認され、同諸島の他2カ所でも同様の滑走路が建設中であることも確認された。 オバマが米軍艦艇の進入すなわち「航行の自由」作戦を許可したのは10月である。いかにも遅すぎるの感が否めないが、なぜ10月まで動かなかったのか?一体オバマは何を待っていたのか? 米国は常に同盟国の意向を重視する。もし戦争になった場合、味方になって共に戦ってくれるかを確認しなければ、軍事的行動を取らないのが歴史的通例だ。キューバ危機ではケネディはフランスに使者を送り時の大統領ドゴールに確認を取っている。 ならばオバマも同盟国の確認を取っていたのであろう。同盟国の確認とは集団的自衛権を行使するかの確認である。その確認をとるのに、そんなに時間の掛かる国は、世界に一つしかない。日本である。 平和安全法制いわゆる安全保障関連法が国会で成立したのが9月19日のことである。集団的自衛権の行使を一部容認したこの法制は、反日勢力によって骨抜きにされてしまったが、少なくとも米国とともに戦うことを明言することはできるのである。 だが法制が施行されるのは、4月以降である。米国は4月以降に南シナ海における軍事作戦を本格化させるべく下準備に入っている。2月にカルフォルニアで米アセアン首脳会談を開き、航行の自由を声明したのも、キューバ危機のとき、米国が中南米諸国の同意を得るべく米州機構を開催したのに酷似する。対する中国も南シナ海西のパラセル諸島には戦闘機を配置し、中央部であるスプラトリー諸島に戦闘機を配備する時期を伺っている。 4月以降、第2のキューバ危機ともいうべき南シナ海危機が勃発する公算は極めて高いのである。…..( 軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹 )
2191 - テラ(株) 第55代コロンビア共和国大統領 元米州機構事務総長 元スリム財団顧問 新型コロナウィルスの脅威を終わらせるためには、治療薬を、今、世界で最も患者数・死者数が増加している中南米に供給することが最重要であるとの認識から、中南米で信頼が厚いセサル・ガビリア氏が、全会一致で選出されました。