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芭蕉たちの城下町村上での宿は、村上の中心に今も有る井筒屋という旅籠久左衛門であった。

村上で2日滞在するが、芭蕉達の行動は港町瀬波（我々の宿舎瀬波観光ホテルの所在地）を見物した事と、村上藩の筆頭家老榊原家の墓が有る浄念寺に参拝したぐらいで余り多くないし、ここで詠まれた句も見当たらない。

しかし村上は村上大祭で曳き回される山車（だし）”おしゃぎり”、武家屋敷跡、村上藩の武士が始めたと云う塩引き鮭の老舗や、昔ながらのお菓子や、小物の店が並ぶ町屋等、城下町の香りが色濃く残っていて見るものが多い。

その”おしゃぎり”に期せずして出会ったのが、当日の朝一番の訪問地石船神社への参拝の帰路であった。

芭蕉たちは村上を発つに際して、石船神社近くから”岩船橋で石川を渡った”とあるので、石船神社には参拝したと思われ,境内には芭蕉の句碑が2基もある。

１基は神社入り口の赤い大鳥居の脇に、そしてもう１基は「磐舟柵」と刻まれている大きな岩舟柵址の碑の前方にある。

　　花咲て　七日鶴見る麓哉　
　　
　　文月や　六日も常の夜には似ず

「磐舟柵」とは蝦夷に対する最前線基地を意味し、日本書紀に648年朝廷の命を受けた阿部比羅夫（あべのひらふ）が住民を使い、ここに防御柵を造らせたと書かれているとの事。

岩船神社はその阿部比羅夫の創建といわれ、古い歴史を持つ。

”おしゃぎり”に出会ったのは、県の天然記念物にも指定されている鬱蒼とした境内の森を抜けて帰る途中の広場であった。

広場の周囲に建てられた”おしゃぎり”専用の倉庫から曳き出された、もしくは当に曳き出されようとしている”おしゃぎり”を取り巻いて、地元の人々が忙しく立ち回っている。

聞けば10月18，19，20日の祭例(岩船まつりのしゃぎり曳行と「とも山」行事）の準備が始まったところらしい。