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風に吹かれて鎌倉見聞_2023

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西武鉄道池袋線西所沢駅から徒歩約10分、戦国時代関東管領山内上杉氏の重臣で武蔵国守護代として南は相模国座間から入間を経て北は武蔵国所沢周辺まで支配していた大石氏の中興、信重(のぶしげ、1334~1424)の墓所である永源寺(えいげんじ、埼玉県所沢市久米)を訪ねました。そもそも大石氏は木曽義仲の子孫と伝えられ、信濃国の出自と言われています。この信濃国出身の大石氏が関東へ進出してきたのは14世紀半ばの南北朝時代と考えられ当時の鎌倉府の警護番として出仕したのではないかと推定されます。その後大石氏は鎌倉公方を補佐する関東管領職山内上杉氏の家臣として武蔵国を中心に活動し一時期は武蔵国の他上野国・伊豆国の守護代を務めるに至ります。ご承知の通り鎌倉府は室町幕府の出先機関で関東10州(後に陸奥と出羽を加えて12州)を管轄するミニ幕府ですが、代々の鎌倉公方が足利一族出身であるが故将軍の後継争いに加われる立場にあり、永享10年(1438)4代公方足利持氏(あしかが・もちうじ、1398~1439)の代では幕府と対立、幕府派遣軍と戦うも敗れ持氏は自害、更に享徳3年(1454)5代公方足利成氏(あしかが・しげうじ、1438~1497)による管領上杉憲忠(うえすぎ・のりただ、1433~1455)誅殺を契機に戦乱となり上杉援軍が鎌倉を制圧、鎌倉に帰府できなくなった成氏は新たな本拠地として古河(現在の茨城県)に拠点を移すこととなり鎌倉府は解体されます。古河に逃れた公方は下総・下野等周辺の地域領主の支持のもとに再編成しますがかつての勢いはなく、代わって勢力を拡大したのは他ならぬ関東管領上杉氏でありました。上杉氏は4家あり、宅間(たくま)・犬懸(いぬがけ)・扇谷(おうぎがやつ)・山内(やまのうち)とそれぞれ鎌倉の地名から家柄を名乗るようになり、やがて宅間・犬懸は滅亡し扇谷家は相模国から武蔵国南部を、山内家は越後、上野国から武蔵国南部をそれぞれ支配することになります。次の展開としては両上杉氏が互いに主導を争う中、伊豆の韮山に居していた伊勢氏が扇谷上杉氏臣下の大森氏を策謀により小田原から追放、念願の相模進出を果たします。小田原に拠点を移した伊勢氏は2代目氏綱(うじつな、1487~1541)の代になりますと摂関家から招いた鎌倉将軍を奉じた執権北条氏を意識して自らを「北条」と称し、かつての鎌倉公方を奉ずる程の権力をめざします。戦国時代中期に入りますと勢力拡大著しい小田原北条氏という新興勢力と古河公方・両上杉氏連合軍という旧勢力が武蔵国北部で対峙する構図と変化します。その雌雄を争う決定的な事件は天文15年(1546)年の河越の戦いで、小田原北条氏3代目氏康(うじやす、1515~1571)による河越城を包囲している連合軍を背後から攻めたて壊滅的に打ち破ります。その結果扇谷上杉氏は朝定(ともさだ、1525~1546)の戦死により扇谷家は滅亡、山内上杉氏は憲政(のりまさ、1523~1579)は勢力を失い上野国平井城に敗走、その後北条軍の追討に耐えられず長尾氏を頼って越後に逃れます。また古河公方足利晴氏(あしかが・はるうじ、1508~1560)は地元古河に戻りますがその権威すら維持困難となり、次第に時流の変化に敏感な地域領主などの支持を失うことになります。さて大石氏の話に戻りますが、同氏に関する情報が限られているので明確な記述ができない歯痒さを感じますが、その中で大石信重は大石氏が関東進出の際の立役者と指摘されています。とりわけ信重が仕えた管領家は山内家上杉憲顕(うえすぎ・のりあき、1306~1368)で上野方面での戦いでは憲顕に忠節を尽くして功績を挙げて、武蔵国比企郡に領地を賜ります。やがて管領職に就任した憲顕に従い上野国から各地を転戦し更なる忠節を尽くし憲顕から入間・多摩両郡の13郷を賜りこれが以降の歴代大石氏の武蔵国支配に繋がったとすれば信重は大石氏の礎を築いた人物と言っても過言ではないと思います。尚、信重の後歴代の大石氏を経て定久(さだひさ、1491~1552)の時代になりますと天文15年(1546)4月の河越夜戦で越後へ亡命した主家である上述の上杉憲政に見切りをつけ、小田原北条氏から3男氏照(うじてる、1540~1590)を養子とし家督を譲り出家、残された部下たちは事実上小田原北条氏の支配下に組み入れられることになります。2022年10月10日追記境内に建てられた説明板には次の如く紹介されています。『 所沢市指定文化財          大 石 信 繁 墓 塔永源寺を創建したと伝えられる大石信繁は、木曾義仲の末裔を名乗り、室町幕府の関東管領を務める山内上杉氏に仕えました。その後合戦の手柄によって上杉氏に重用され、武蔵国のうち多摩・入間両郡の内13郡の領主となり、さらには武蔵・伊豆両国の守護代を歴任しました。本堂の石段を上がったところに覆屋に入った石塔がありますが、これが大石信重の墓塔です。五輪塔や宝篋印塔などの部分で構成されていますが、銘文のある基礎石は宝篋印塔の形式であるので、本来は宝篋印塔であったと考えられます。銘文には次のように刻まれています。        直山守公?主        正長三祀**        甘八日 己姓「直山守公」とは、大石信重の法名です。この石塔はいささか変形ながら中世の所沢地方を支配した大石氏の資料として貴重なものです。      平成15年3月                所沢市教育委員会 』       

西武鉄道池袋線西所沢駅から徒歩約10分、戦国時代関東管領山内上杉氏の重臣で武蔵国守護代として南は相模国座間から入間を経て北は武蔵国所沢周辺まで支配していた大石氏の中興、信重(のぶしげ、1334~1424)の墓所である永源寺(えいげんじ、埼玉県所沢市久米)を訪ねました。

そもそも大石氏は木曽義仲の子孫と伝えられ、信濃国の出自と言われています。この信濃国出身の大石氏が関東へ進出してきたのは14世紀半ばの南北朝時代と考えられ当時の鎌倉府の警護番として出仕したのではないかと推定されます。

その後大石氏は鎌倉公方を補佐する関東管領職山内上杉氏の家臣として武蔵国を中心に活動し一時期は武蔵国の他上野国・伊豆国の守護代を務めるに至ります。

ご承知の通り鎌倉府は室町幕府の出先機関で関東10州(後に陸奥と出羽を加えて12州)を管轄するミニ幕府ですが、代々の鎌倉公方が足利一族出身であるが故将軍の後継争いに加われる立場にあり、永享10年(1438)4代公方足利持氏(あしかが・もちうじ、1398~1439)の代では幕府と対立、幕府派遣軍と戦うも敗れ持氏は自害、更に享徳3年(1454)5代公方足利成氏(あしかが・しげうじ、1438~1497)による管領上杉憲忠(うえすぎ・のりただ、1433~1455)誅殺を契機に戦乱となり上杉援軍が鎌倉を制圧、鎌倉に帰府できなくなった成氏は新たな本拠地として古河(現在の茨城県)に拠点を移すこととなり鎌倉府は解体されます。

古河に逃れた公方は下総・下野等周辺の地域領主の支持のもとに再編成しますがかつての勢いはなく、代わって勢力を拡大したのは他ならぬ関東管領上杉氏でありました。

上杉氏は4家あり、宅間(たくま)・犬懸(いぬがけ)・扇谷(おうぎがやつ)・山内(やまのうち)とそれぞれ鎌倉の地名から家柄を名乗るようになり、やがて宅間・犬懸は滅亡し扇谷家は相模国から武蔵国南部を、山内家は越後、上野国から武蔵国南部をそれぞれ支配することになります。

次の展開としては両上杉氏が互いに主導を争う中、伊豆の韮山に居していた伊勢氏が扇谷上杉氏臣下の大森氏を策謀により小田原から追放、念願の相模進出を果たします。

小田原に拠点を移した伊勢氏は2代目氏綱(うじつな、1487~1541)の代になりますと摂関家から招いた鎌倉将軍を奉じた執権北条氏を意識して自らを「北条」と称し、かつての鎌倉公方を奉ずる程の権力をめざします。

戦国時代中期に入りますと勢力拡大著しい小田原北条氏という新興勢力と古河公方・両上杉氏連合軍という旧勢力が武蔵国北部で対峙する構図と変化します。

その雌雄を争う決定的な事件は天文15年(1546)年の河越の戦いで、小田原北条氏3代目氏康(うじやす、1515~1571)による河越城を包囲している連合軍を背後から攻めたて壊滅的に打ち破ります。

その結果扇谷上杉氏は朝定(ともさだ、1525~1546)の戦死により扇谷家は滅亡、山内上杉氏は憲政(のりまさ、1523~1579)は勢力を失い上野国平井城に敗走、その後北条軍の追討に耐えられず長尾氏を頼って越後に逃れます。

また古河公方足利晴氏(あしかが・はるうじ、1508~1560)は地元古河に戻りますがその権威すら維持困難となり、次第に時流の変化に敏感な地域領主などの支持を失うことになります。

さて大石氏の話に戻りますが、同氏に関する情報が限られているので明確な記述ができない歯痒さを感じますが、その中で大石信重は大石氏が関東進出の際の立役者と指摘されています。とりわけ信重が仕えた管領家は山内家上杉憲顕(うえすぎ・のりあき、1306~1368)で上野方面での戦いでは憲顕に忠節を尽くして功績を挙げて、武蔵国比企郡に領地を賜ります。

やがて管領職に就任した憲顕に従い上野国から各地を転戦し更なる忠節を尽くし憲顕から入間・多摩両郡の13郷を賜りこれが以降の歴代大石氏の武蔵国支配に繋がったとすれば信重は大石氏の礎を築いた人物と言っても過言ではないと思います。

尚、信重の後歴代の大石氏を経て定久(さだひさ、1491~1552)の時代になりますと天文15年(1546)4月の河越夜戦で越後へ亡命した主家である上述の上杉憲政に見切りをつけ、小田原北条氏から3男氏照(うじてる、1540~1590)を養子とし家督を譲り出家、残された部下たちは事実上小田原北条氏の支配下に組み入れられることになります。


2022年10月10日追記

境内に建てられた説明板には次の如く紹介されています。

『 所沢市指定文化財
          大 石 信 繁 墓 塔

永源寺を創建したと伝えられる大石信繁は、木曾義仲の末裔を名乗り、室町幕府の関東管領を務める山内上杉氏に仕えました。その後合戦の手柄によって上杉氏に重用され、武蔵国のうち多摩・入間両郡の内13郡の領主となり、さらには武蔵・伊豆両国の守護代を歴任しました。

本堂の石段を上がったところに覆屋に入った石塔がありますが、これが大石信重の墓塔です。五輪塔や宝篋印塔などの部分で構成されていますが、銘文のある基礎石は宝篋印塔の形式であるので、本来は宝篋印塔であったと考えられます。銘文には次のように刻まれています。

        直山守公?主
        正長三祀**
        甘八日 己姓

「直山守公」とは、大石信重の法名です。この石塔はいささか変形ながら
中世の所沢地方を支配した大石氏の資料として貴重なものです。

      平成15年3月
                所沢市教育委員会 』

       









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