Images of 垂水フェリー
鹿児島鴨池港と垂水港を結ぶ鴨池・垂水フェリー。運航主体の南海郵船はバス会社・鹿児島交通と同じ、いわさきグループの系列会社だ。
桜島フェリーと並ぶ、鹿児島と大隅半島を結ぶメイン航路である。そして鹿児島と大隅半島の中心都市、鹿屋の短絡ルートでもあるため、通勤・用務利用が多い航路として、運転頻度も1日29往復と非常に高い。
このフェリーの特筆すべき点は、一部の便が路線バスをそのまま載せて運航すること。1日6往復の鹿児島中央駅~鹿屋間バスがそれだ。平成23年の九州新幹線全線開通時に、新幹線効果を鹿屋・大隅地域の活性化に繋げようという目的で運転を開始した。
このバスは、九州内のバス乗り放題チケット、SUNQパスが利用できる。SUNQパスを持つとバス路線の他、桜島フェリー等の航路が利用できるが、垂水フェリーは対象外となっている。しかし鹿児島中央駅~鹿屋間バスに乗れば、事実上乗船出来るのだから面白い。なおこのバスは非予約制である。
このような形態のフェリー&非予約制の路線バスは他にはない。対象を予約制の都市間輸送バスに広げても、他はスオーナダフェリー(山口県徳山港~大分県竹田津港)&都市間輸送バス「別府湯けむり号」(広島~別府、予約制)ぐらいである。
鹿児島側の鴨池港は鹿児島市街地のほぼ中部にある。天文館といった鹿児島市中心部から見ると数キロ南だが、鴨池港周辺は鹿児島県庁を中心に、鹿児島の重要なオフィス街のひとつを形成し、かつ高層住宅も立ち並ぶ。昔は鹿児島空港(鴨池空港)があった場所だ。
鴨池港フェリーターミナルは古いなりにも、かなり立派な建物だが、中に入ると、何もなくガランとした空間が大きく占拠して寂しい。売店も1店舗しか開いてない。その何もない空間に、昔は沢山の客で賑わったものだが、便数が大幅に増え、通勤利用も容易なほど利便性が向上している今では、このフェリーターミナル内に客が滞留する時間、そしてその客数自体が激減したのだろう。
出航後、フェリーは回転し、鹿児島県庁などのビル群を眺めた後、鹿児島湾(錦江湾)を東へ漕ぎ出す。左手には鹿児島のシンボル、桜島をバックにしてすれ違う垂水フェリーの姿。便数が多いから、フェリー同士がすれ違う場面は、ダイヤの大幅な変更等でもない限り、日中はほぼ確実に見られる。
2階の客室部分は背面テーブル付きのクロスシートと、サロン配置のソファが並ぶ。そこに隣接する船内の売店は閉鎖となった。これもまた、昔に比べて大隅半島から鹿児島への通勤利用の割合が増えた影響だろう。なお40分と短い航路という事情もあり、旅客運賃はモノクラス。特等席や一等席などはない。
ただ、売店カウンター跡の隣にあるうどんコーナーは元気に営業しており、それもかなりのスペースを取っている。短い航路の旅だが、供食施設を備えているのが嬉しい。客室にもうどんの匂いが漂い、食欲をそそる。船内の自動放送でも、このうどんを垂水フェリー名物「南海うどん」としてPR案内している。
ちなみにいわさきグループのポイントカードの景品には鴨池・垂水フェリーの旅客、車両の回数券だけでなく、この「南海うどん」の回数券までこさえているのだから、どれだけ「名物」としてプッシュしているかお分かりいただけるかと思う。
鴨池港フェリーターミナルと同様、使用される船もまたレトロ感が漂う。昭和末期から平成初期に新造された船齢30年前後のフェリーだ。喫煙スペースの木製のベンチシートは、非常用浮袋を内蔵している関係でとても重厚であり、最近では他には見ないような年代ものだ。更に3階には展望スペースと障害者用スペースがあるが、その3階に行くのにバリアフリーは全く考慮されていない。桜島フェリーが逐次新造船を導入しているのとは対照的だ。
再度フェリーが回転をはじめると、終点の垂水港に到着。かつては垂水市街地の中心部に位置していたが、現在は南に約1km移転している。移転からさほど年月は経っていないので、こちらのフェリーターミナルは真新しい。車両、旅客の料金徴収や改札は、鴨池港ではやらず、垂水港側で一括してやっている。
最後の写真は、フェリーに収納された鹿児島中央駅~鹿屋間の路線バス。この日の乗客は3人程度と利用は低調だった。なお乗客は乗船中、バスから降りなければならない。