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1月21日(Wed)
今日は二等辺三角形の長い辺を行くので一日がかりだ。
フリ・モアイの内戦で倒されたモアイをやたらと見た。顔を下にして倒されているから、気にしなければ岩にしか見えない。復元はその後行われていない。倒れ倒れたモアイも、またフリ・モアイの歴史を伝えることも必要ではないかといった議論も出ているそうだ。
倒れたモアイの風化を遅らせ、保存をするにはどうしたらいいか。石の表面に塗ると風化をある程度遅らせることの出来る特殊な樹脂が 開発され、日本の奈良文化財研究所の沢田正昭教授(トンガリキの復元にも携わった)が中心となって、 モアイにその樹脂を塗り始めているそうだ。その手始めにアフ・トンガリキの数体に作業をはじめているとか。科学が遺跡保存に大いに寄与するのは結構なことだ。
そのモアイのひとつに日本人観光客が落書きをした。恥ずかしい所業として日本の茶の間に紹介されたから、これは記憶に新しいと思う。
ガイドたちが昨日までなかったモアイの側面に彫り傷を見つけた。なんだろう、どうも日本語のようだ。渡辺さんという日本人が呼ばれ、日本文字ではないかと聞かれた。見るとそれは日本人の名前。そこで島中のホテルが調べられ、落書きした日本人が検挙された。当時28歳の会社員だった。渡辺さんは警察で通訳しなければならなくて、とても苦しい思いをしたという。というのは落書き犯は、反省の色はさらさらなく、なぜ書いてはいけないのか、と反論したそうだ。
その所業に島民が怒ったことはいうまでもない。島民にとって日本は、民間企業が協力してアフ・トンガリキ(後述)を修復したから、日本に感謝と好意を抱いていたのだ。その気持ちを裏返しにしてしまったのだ。修復費40万円、そしてもう一度島に謝罪に来ることを条件に保釈されたが、彼は未だその任をはたしていないそうだ。日本人としてはなんとも恥ずかしい。
島内ツアーは出来るだけ団体で行動する。近年、レンタ・カーやレンタ・バイクが出来た。島人の収入になるから規制はむずかしい。しかし遺跡には常時監視員がいるわけではない。だから、レンタ・カーやレンタ・バイクで行動する人たちを指導するのは出来ない、という。落書き犯もレンタ・カーでやってきた。レンタル会社にも指導義務はあるだろう。レンタル会社も責任を負わなければなるまい。
ブータンのように、政策としてツアーを優先させているところもある。ヨーロッパだって城や王宮の見学はたいていガイドがつく。勝手に歩きたい気分もあるが、遺跡や文化財保護を優先したら、やむをえない処置かもしれない。もうひとつにはガイドという職業の保護にもなる。
イースター島のガイド組織は研究もし、新しいガイドの育成もしているようだ。ヴィクトールのようなトップクラスのガイドには依頼も多い。ヴィクトールはガイド仲間に「今わかっていることは正確に客に伝えよう」と言っているそうだ。
昨日のことだ。客がヴィクトールを囲んでなにやら話している。ヴィクトールが困った顔をしている。
「何を言っているの?」と聞くと、客は、
「歴史的にはオロンゴの鳥人村よりアフ・アキビの方が古い。古いほうから案内すべきではないか」と文句を言っているのだ。
ヴィクトールは「私は単なるガイド、スケジュールを決めるのはツアー会社だ。そういった苦情はツアー会社に言ってくれ」と答えている、と。ガイドも歴史順に回った方が説明しやすいが、時間的ロスが出来てしまうので、こういうスケジュールになっているようだ。
「いいんだよ。頭の中で歴史的時間を調整すればいい」とのんきな私はとんじゃくない。
島にいる日本人は4人。今はハイシーズン。みなガイドに追われているようだ。日本人の80%がタヒチまわりで來島するそうだ。タヒチからは月曜日に、水曜日の夜にはサンチャゴからの飛行機が着く。チリの人たちも大勢島に観光にやってくる。
チリ人の話し方は早口のようだ。聞いていると、「Si.」というところを「Si.Si.Si.Si,」と鉄砲玉のように言う。瓜生君もチリ人のしゃべり方は南米でも早口だという。
瓜生君が案内するのは、タヒチに来たついでにと寄るハネムーンのカップルが多いいそうだ。