Images of ホーレス・H・ハイデン
第1戦
序盤から王者ブルズがサンズを圧倒。ホーレス・グラントが第1Qだけで11得点をあげ、早くもサンズを突き放すと、第2Qにはブルズのリードがこの日最大の20点差にまで広がった。後半に入るとサンズが追い上げを見せるがB.J.アームストロングの3Pシュートでサンズの追撃を断ち切ると、第4Qにはマイケル・ジョーダンがこの日の31得点のうち14得点をあげ、100-92でブルズが敵地アメリカ・ウエスト・アリーナで初戦を飾った。スコッティ・ピッペンは27得点を記録した
第2戦
第1戦の敗北で目を覚ましたサンズは、第2戦序盤からペースを握り、前半を14点リードで折り返した。しかし後半に入るとジョン・パクソンの連続5得点などでブルズが猛反撃を見せる。サンズはシューティングガードのジョーダンにパワーフォワードのチャールズ・バークレーをマッチアップさせるという奇策に打って出るも、ブルズの勢いを止めることは出来ず、遂には逆転を喫してしまう。最後はこの日自身プレーオフ3回目となる15得点12リバウンド12アシストのトリプル・ダブルを達成したピッペンがダニー・エインジの3Pシュートを見事にブロックし、111-108でブルズが敵地で2連勝を飾った。ジョーダンは42得点12リバウンド9アシストを記録。サンズはバークレーが42得点13リバウンド、エインジが20得点と奮闘したが、他が続かなかった。ファイナルでホームでの第1戦、第2戦を連敗したチームは、この年のサンズが初めてである。
第3戦
ホームでまさかの2連敗を喫したサンズに、スイープ負けの可能性が出てきた。シカゴ・スタジアムに押し寄せたブルズファンは、第3戦も当然のようにブルズが勝利するものと思っており、Sweepを意味する箒を会場に持ち込むファンも居た。しかし第3戦は皆の思惑通りには行かなかった。
ポール・ウェストファルHCは第3戦に備えて大胆な作戦を練っていた。ジョーダンへのマッチアップをスピードとクイックネスに優れたケビン・ジョンソンに託し、さらに他のマッチアップもバークレーをビル・カートライトに、マーリーをピッペンにといった具合に、全て変えてしまったのである。この奇策が功を奏し、サンズはブルズと互角に渡り合った。規定の時間内では決着がつかず、オーバータイムでも、さらにダブルオーバータイムでも決着がつかず、試合はついにファイナル史上2度目となるトリプルオーバータイムへと突入した。ファイナルで最初にトリプルオーバータイムまで戦ったのは、1976年のサンズとボストン・セルティックスであり、この時サンズのエースとしてセルティックスを追い詰めたのがポール・ウェストファルだった。トリプルオーバータイムに入ると徐々にサンズの勢いがブルズを凌駕し始め、マーリーの3Pシュートなどでサンズが9連続得点の猛攻を見せた。残り1分9秒にはマーリーのフリースローのあと、ブルズのステイシー・キングに渡ったボールをバークレーが見事にスティールし、そのままダンクしてサンズの勝利を決定付けた。最終スコアは129-121、サンズがようやくファイナル1勝目をあげた。
サンズはバークレーが24得点19リバウンド、ケビン・ジョンソンは62分の出場で25得点9アシスト、新人リチャード・デュマスは17得点を記録した。そして第2戦まで不調続きだったダン・マーリーはファイナルタイ記録となる6本の3Pシュートを決め、28得点を記録した。ブルズはジョーダンが44得点9リバウンド、ピッペンが26得点10リバウンド9アシスト、アームストロングが21得点7アシストを記録した。
第4戦
ジョーダンとバークレーが親友同士という関係もあり、第3戦の前には両チームがジョーダンの経営するレストランで会食を開くという、やや和やかな雰囲気で進んでいたファイナル。しかし第4戦は両者死力を尽くした激戦となった。
この日のジョーダンは絶好調でFG21/37の55得点を記録。しかしバークレーも黙っておらず、32得点12リバウンド10アシストとプレーオフ通算4回目のトリプル・ダブルを達成する。第3Qにはバークレーとピッペンが小競り合いを起こし、さらにジョーダンとエインジがボールの奪い合いから口論となり、テクニカルファウルを食らうなど、両チームとも闘志を剥き出しにした激しい戦いとなった。試合はブルズがリードしていえたが、試合終盤サンズが追い上げを見せ、第4Q残り3分33秒には106-104とその差2点まで詰め寄った。しかし最後はエインジからケビン・ジョンソンへのパスがミスパスとなり、ジョーダンがこの日4回目のスリーポイントプレーを決め、111-105でブルズが激戦となった第4戦を制し、三連覇に向けてついに王手を掛けた。
第5戦
後が無くなり、追い詰められたかに見えたサンズだが、しかし彼らは「シカゴの街を救え」を合言葉に第5戦を108-98で勝利し、ホームのアメリカ・ウエスト・アリーナへの切符を手に入れた。すでにシカゴの街は興奮の坩堝にあり、地元で三連覇を達成しようものならその騒ぎの規模は想像もつかない程のものとなるだろうと予想された。シカゴ市はテレビや新聞などで騒ぎを起こさないよう呼びかけ、また商店などでは大きな騒動に備えて商品を片付けたり、窓にビニールテープを張る店も出てくるほどであった。
サンズは見事にシカゴを騒動の魔の手から救い、ケビン・ジョンソンが25得点8アシスト、デュマスが25得点、バークレーが24得点、マーリーが11得点12リバウンド7アシストを記録した。ブルズはジョーダンが41得点、ピッペンが22得点を記録した。
第6戦
スイープの可能性さえあったサンズが、敵地での3連戦を2勝1敗で切り抜け、見事にホームに戻ってきたことに地元のファンは興奮し、大声援でサンズを迎えた。しかし第6戦は終始ブルズが試合を支配し、第4Qを迎える時点でも87-79とブルズが8点のリードを奪っていた。しかしサンズも必死に食い下がり、渾身のディフェンスでブルズを抑え込むと、残り6分9秒にはマーリーの3Pシュートで逆転を果たした。この頃ブルズのオフェンスは完全に空回りしており、24秒バイオレーションを立て続けに3回も犯した。点差はサンズの4点リードに変わり、ブルズは追い詰められた。
そのブルズを救ったのはやはりジョーダンだった。残り43秒、デュマスのミスショットを拾ったジョーダンは、そのままボールを運ぶとあっという間にサンズのディフェンスを駆け抜け、そのまま非常に高い打点のレイアップを決めた。ジョーダンのコースト・トゥ・コースト、"グライダー"とも呼ばれるビッグプレイで98-96とその差2点にまで追い上げた。続くサンズのオフェンスはマーリーがショットをミス、14秒を残して攻撃権はブルズに渡った。舞台は整った。
サンズが最も警戒したのはやはりジョーダンだった。アームストロングからのインバウンドパスを受け取ったジョーダンを、ケビン・ジョンソンが厳しくマークする。ジョーダンはピッペンにパス。サンズはマーク・ウェストがすぐにピッペンのカバーに入った。ピッペンはローポストでフリーとなっていたグラントにパスを送るが、そのグラントはさらにスリーポイントラインで待ち構えていたジョン・パクソンにパス。パクソンの放った3Pシュートは見事にサンズのゴールを突き抜け、ブルズが残り3.1秒で99-98と逆転を果たした。ブルズにとって、第4Qではジョーダン以外の初めての得点だった。
再度の逆転を狙ったケビン・ジョンソンのシュートはグランドのブロックにより阻まれ、ブルズが99-98で勝利。1960年代のボストン・セルティックス以来、実に25年ぶりとなる三連覇(スリーピート)を成し遂げた。ファイナルMVPは6試合中4試合で40得点以上を記録したマイケル・ジョーダンが選ばれた。ファイナルMVP3年連続受賞は史上初の快挙であり、またジョーダンが記録したシリーズ平均41.0得点は、ファイナル新記録である。
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